
先日、「全盲の方がパソコンの調子が悪いので困っているのでみてやってもらえないか」と、知り合いから電話がありました。
目が相当悪い方(眼鏡とかルーペ使用)のフォローは普通に行っていますが、全盲の方というのははじめてで、いったいどうやって使っているのだろうか、てっちゃにサポートできるのか、不安もありましたが、松本市内のお宅へ訪問することにしました。
チャイムを鳴らすと、優しそうな奥さんが出迎えてくださいました。そして、奥さんも全盲であると告げられました。
パソコンを使っている旦那さんもとても優しい方で、「遠くまで来ていただいて申し訳ない」と何度もおっしゃっておられました。
パソコンはデスクトップ(windows7)電源はすでに入っておりましたが、ディスプレイは電源が入っていません。そうか、全盲の方にはディスプレイは必要ないんだ。
ディスプレイを使うことに了承をえてスイッチを入れたところ、なんと、画面が上下逆さま。さらに驚いたのは、マウスを操作しようと思って動かしたところ、カーソルが動かない。お聞きしたら、「私たちはマウスは使えないので、最初からマウスは使用しない設定にしてもらった」とのこと。そうかぁ、マウスもいらないんだ。
一体どうやってパソコンを操作しているのかというと、パソコンの電源を入れてから終了するまで、すべて、画面の状況を音声で説明するアプリに頼ることになります。その情報をもとに、キーボードで操作するのです。
ところが、その肝心な音声が出なくなってしまったということでした。
一回目の訪問で、パソコンが正常に起動しない状況などから、相談した結果、新たにパソコンを購入することになりました。アプリがwindows10 に対応していることも旦那さんは承知でした。
二回目、三回目の訪問で、新たなノートパソコンにすべての音声アプリ(5種類)をインストール、無線の設定などを行うとともに、旧PCからのデータの移行、その他、旦那さんのご要望にお応えするため作業を代行しました。
デスクトップパソコンのキーボードに慣れていることから、ノートパソコンのキーボードに躊躇されておられたので、ノートパソコンに今まで使っていたキーボードをつなぎ、さらにスピーカーもつなげてあげると、とても喜んでおられました。
音声アプリの音声にしたがって、てきぱきとキーボードを操作する旦那さんの様子は感動ものです。旦那さんの指はキーボードの位置をすべて覚えているのです。
インターネットも専用のアプリで音声でどんどん説明してくれます。メールの送受信もやっておられます。
それから、「マイワード」というアプリを使って、文章を入力してファイルにしているのですが、データの移行をお手伝いして分かったことですが、そのファイルの数がすごいことになっておりびっくりしました。
旦那さんは、音声アプリについて、ありがたいアプリではあるが、エラーになった場合は本当に困る、時々、画面によっては無音になってしまうと、やりようがないので強制終了して再起動ということになるとおっしゃっておりました。
創業40周年を迎える前日にビルゲイツ(Microsoft社)が社員に宛てたメールの中で、
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「私はMicrosoftの過去よりも未来について考えています。コンピュータは今後の10年で今までにないくらいのスピードで進化するでしょう。
我々はすでにマルチプラットフォームの世界に住んでおり、コンピュータの使用は今までよりさらに広がっていく。
我々が今いる場所は、コンピュータとロボットが見て、動いて、自然に交流し、多くの新しいアプリケーションを生みだし、人々に力を与えることができるくらいまで近づいています。」
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と、言っていましたが、こういう分野で、研究を重ね、優れたアプリを現実に開発している会社があることを知り頼もしく思うと同時に、今後、旦那さんの要望も改善されていくのだと思いました。
仕事が終わり、挨拶するてっちゃに、奥さんが「これ、どうぞ」って飴を二つ下さいました。「こりゃこりゃ、ありがとうござんす」
帰りの車中、はじめて味わうようなおいしい飴をしゃぶりながら、あの旦那さんの努力に比べたら、てっちゃなんてまだまだ甘い、申しぶんのないパソコンの環境の中にいながら、まだまだ、パソコンを使いこなしているとは言えないな、と反省しながらの運転となりました。
(2018/6/30)
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